緑川さんは勝敗に、こだわっていた。だってコケてゴールしたあと、くやし涙ながしていたじゃないですか。もし本当に勝敗にこだわっていなかったのであれば、ビリでゴールしたところで、サバサバとした表情で「まあ、しょうがなかったね、テヘッ」で終わっていたでしょうし。もともとリレーの選手を引き受けたのもクラスの連中の負け犬根性に憤慨したからでしょ。1組と4組のリレーの選手が全員陸上部だろうとなんだろうと関係ない。緑川なおは、走るのは好きだけど競争とかは苦手らしいのだが、でも負け犬根性はもっと苦手みたい。そして、やるからには絶対に勝ちたいと思うのが普通の感覚。けれどもリレーの選手のひとりに鈍足の黄瀬さんを選んだ。なぜか。

黄瀬さんは、足の遅い自分が選手ではみんなに迷惑だろうからと、リレーの選手を辞退したいと緑川さんに告げる。けれども緑川さんは「勝ち負けなんて気にしなくていいよ。一生懸命やってみよう。」と返す。辞退を受け入れてもらえない黄瀬さんは困惑気味に「どうして、私なの?」と緑川さんに食い下がる。その質問に緑川さんは一瞬とまどった表情をしたが「黄瀬さんの遅れを私がカバーして他のクラスの陸上部の連中をゴボウヌキして優勝できたらドラマチックでしょ。あたしがヒロインになるんだから!」なんて本当の気持ちは伝えられない。本心をそのまま口にするのは穏やかではないので、とりあえず「ごめんね、あたしのワガママにまきこんじゃって。あたし、みんなと走りたいンだ。この5人で、いっしょに。」と苦笑して、その場をとりつくろうのがせいいっぱいな緑川さんがよかった。

競争はキライだけど、出来レースは好き。ヒロインになるのも大好き。それが緑川さんなのかなと。そんな印象を受けました。