亜久里ちゃんはアイちゃんがいないと変身できません。
アイちゃんは妖精で、キュアエースの変身アイテムを体内に格納しているのです。
そういえば、そうでした。
なのに忘れてた、なぜか?
アイちゃんって、妖精なんだけど、いつのまにか人間の赤ちゃん扱いされてるんですよね。これって、なんか怖くないか。
それにしてもアイちゃんには、自分は人間ではなくて妖精なんだという自覚はあるのだろうか?
アイちゃんは人間になりすまして、この世界で人間としてやってく腹づもりなんでしょうか。
なんか怖いな。考えれば考えるほどに。

アイちゃんはけっして人間ではなくて、妖精さんなのです。ここは重要なトコロですから。そこんとこはキチンと認識しておかないと。
さらにいえばアイちゃんこそは、ひとびとの心の弱さに忍び寄る自己中心的な感情をおさえるための防護壁なのでした。ある意味、人間社会のいけにえなんです。

そこで今回、ジコチュートリオのみなさんは考えました。アイちゃんを堕落させて自己中の防波堤を壊してしまえばいいと。そうすれば世の中に自己中が蔓延するからと。
具体的な作戦としては、夜な夜なアイちゃんを誘い出しては、アイちゃんの好き放題にさせてみました。
安易な作戦でしたが、案外うまくいきました。
アイちゃんに不摂生させてみました。
するとアイちゃんは、すっかりだらしなくなりましたとさ。
めでたしメデタシ。
それにしてもカンタンに敵のワナに引っかかるなアイちゃん。

堕落、それは恐ろしいモノです。
かつては醜の御楯と出で立っていたアイちゃんでしたが。放蕩の味をおぼえてしまってからというものの、みずからの任務をあっさりと放棄します。というかアイちゃんは自身に防護壁の任務が課せられているという認識があったのかどうかも疑わしいのですが、そこはスルーしておくことにしましょう。
とにかく。うみゆかば、みづくかばね。やまゆかば、くさむすかばね。そんな自己犠牲はバカらしい、と。
アイちゃんは、自分のやりたいことだけやって。すきなものだけ飲んで食べて、オシッコしてウンコしてと。
アイちゃんは「わたしが世界の中心なんだ!」みたいな。そんな生活がすっかり気にいったようでした。
愛のために。プリキュアのために。トランプ王国のために。ついでに岡田のために。へにこそ死なめ、かえりみはせじ。そんな気持ちはキレイさっぱり消えてなくなってしまったようでした、アイちゃん。

いや、消えてはいなかった、キレイさっぱりとは。
なんかしらんが、キュアハートさんから思い出話を聞かされたら、情にほだされたらしくって。
アイちゃんは復活した。
うーん、これは、どうしたことか。
やっぱり、そうですかね。飽きてくるんですね、放蕩生活というのは。
好き勝手に生きるというのは、幸せのようで、じつは退屈なものなんでしょう。
毎日が休日であるよりも、たまに休みがあるからこそその日が楽しい、みたいな。
きらいなニンジンを無理して食べたあとのケーキはうまい、みたいな。
塩をなめたあとの砂糖の甘さはより甘い、なんてね。
ちょっと違うか?
でもだいたい言いたいことはわかってくれるよね?頭の回転の早いみなさんなら。

けだし規律というものはどうしても必要で。
その規律を守ることで社会が成り立っていて、人と人とのつながりできあがる。
みんなが決められたルールのなかでうまく立ち振る舞うからこそ、そこに面白みもあるし、感動もあるんだ。
そしてまた社会のなかで自分に課せられた任務があるからこそ、自分には居場所があり存在意義があるんだと確認できるんだと。
アイちゃんは気がついたのかもしれない。
アイちゃんは、自分が人間だと勘違いしているのかもしれないけれど、とにかく人間らしくありたいと願ったのかもしれない。

まあ、そんなにむずかしく考えなくても。
キュアハートさんが語る昔話のしんみりとした語り口に、アイちゃんは感極まっただけだと理解してればじゅうぶんなのかもしれません。
アイちゃんって、わりと単純ですもんね。
また後日、ジコチューさんたちが誘いにきたら、今回のことなんて忘れてしまって、ホイホイついてっちゃてそうですもん、アイちゃん。