メルヘンが理想や幻想で、バッドエンドが現実。そう考えると納得できる。浮世とは、現実とは、バッドエンドそのものなのです。どんなにがんばったところで人は寿命がくれば死ぬ。がんばってもムダです。人類だって地球だって滅亡する。数十億年後には地球は巨大化した太陽にのみこまれて消滅してしまうらしいのだ。ああ、現実はなんて厳しいのだろうか。なにも数十億年後の話ばかりではありません、いまの現実をみわたしてもバッドエンドだらけじゃないですか。世界ではあいかわらず飢餓で苦しんで死んでいく人がたくさんいると聞く。日本では深刻な原発事故が起きて放射能漏れ問題が未解決。もっと身近なところでは夏休みの宿題が終わらなくて新学期そうそう先生に怒られて涙目。などなど。ああ、現実はなんて厳しいのだろうか。というわけで、現実ばかりをみてると絶望します。死にたくなります。だからこそ人々は現実から目をそむけるのです。メルヘンを、希望を、求めるのです。

メルヘンとハッピーエンドは違います。ハッピーエンドはむしろバッドエンドにちかいのです。ハッピーとかバッドとかは主観的なものですから、終焉をむかえたときにハッピーだったかバッドだったかなんてのは、その人の感覚しだいですからね。ひるがえってメルヘンにはエンドが、終わりが、ないので、もしメルヘンが終わったと感じたら、それは終わったのではなくて、すべての意識が現実世界に戻っただけの話なのです。メルヘンをつづける気力がなくなる、つまり、希望をなくし、心の支えを失ったとき、ひとは厳しい現実を無防備のままに、まのあたりにし、究極に絶望するのです。そしてファントムになるのです。もし究極に絶望した状態に於いてですら、そこに希望の光を、メルヘンの光を、見いだせたのなら、そのときは、ハイ、もうおわかりですね、魔法使いになれるのですよ。

もし、あなたが、バッドエンドは悪なのだから全滅させなくてはならない、とか考えたとしたら、それは明らかに違うでしょう。バッドエンドはすべて現実の出来事そのものなのだから、バッドエンドを全滅させるということは、つまり、現実を、我々と我々の住む世界を全滅させるということになります。それって、どうなのでしょうか。まあ、それはそれでハッピーエンドだという解釈も成り立たないこともないのですがね。でも、そうするとメルヘンもなくなってしまいます。メルヘンとは、ひとが存在して、ひとが空想して、はじめて成立するものなのですから。ひとが、人類が、存在しないのであれば当然、メルヘンも存在しません。絶望もないかわりに希望もなにもない、ということです。

いちおう人類の存在を前提に話をすすめたいので、だってそうでないとここで論じていることも無意味になってしまいますから。そんなわけで、バッドエンド王国は全滅しません、というか全滅させてはダメなのです。バッドエンドは、あくまで存在させといて、そのうえでメルヘンのちからでそれを押さえつけておく。それが正解なんじゃないでしょうか。

で、まえおきが長くなりましたが、そのながれでいくと、スマイルプリキュア!という物語も、和解エンドでもなく全滅エンドでもなくなってくるような気がしますね。具体的には、皇帝ピエーロ様が復活するたびに封印を繰り返すという、一言でいえば封印ループでしょうか。バッドエナジーが集まり、封印がとかれるたびに、また封印しなおすという。終わらない戦い。スマイルプリキュア!。