おばあちゃんの宝物とは、慣れ親しんだ山の環境そのもののことですね。その山に住む、妖怪というか怪異というか、そういったものまでもを含めて。なにかこう、人間だけが特別な存在なのではなくて、そうではなくて、人間も動物も妖怪も山の中ではみんな同等なんだよと、おばあちゃんは認識している。おばあちゃんは山に長く住んでいるのでしょうけれど、でも、この山のことをすべて知りつくしているとか、そういったおもいあがった気持ちはなくて、いつも謙虚に、山をうやまい、感謝し、畏怖しているのでしょうね。まだまだ知らない山の住人がいても不思議ではないとすら感じているようです。だからこそ突然ウルフルンさんが現れても、驚かないどころか、もてなしてあげようとすら思ったのでしょうね。

どうやら星空さんは、両親から祖母を説得するよう、たのまれていたようです、いっしょに都会で暮らそうと。ご両親は何度も説得を試みたのでしょうけれどダメだったのでしょうね。そこで星空さんに白羽の矢が立った。孫の言うことなら、おばあちゃんも聞いてくれるのではないかと。おそらくそんなかんじなのかな。でも、おばあちゃんはこの山の自然に溶け込んでいる、おばあちゃんもこの山の自然の一部なのだ。なので、おばあちゃんをムリヤリに山から都会へと連れて行っても、うまくいくはずもないのだろう。おばあちゃんはわかっている、自分は自分だけで生きているのではなくて、この山の自然環境のなかで、もらったり与えたりして、そうやって自分は生かされているし、また山を守ってもいるのだと。だから、この山でしか暮らせない。たとえ困難があっても、この山となら乗り越えられる気がするし、たとえダメだったとしても、それはそれでそれも運命だったのだと受け入れたい。そんな、おばあちゃんの願いのようなものが感じとれた。いい話だった。とにかく、この山とともに運命をともにしたいという、おばあちゃんの真摯な態度からは、なにか人間的な大きさを感じたね。というわけで、交通が不便だとか、ちかくに大きな病院がないだとか、そんな都会人のちんけなモノサシでおばあちゃんの思惟をはかろうとしても無意味なのです。