いつも快活な緑川さんですが、じつは心の奥では「家族なんて、いつかバラバラになってしまう」と不安におもっているのです。

数年前に両親が離婚して、緑川さんのいまのお母さんは実父(デューン)の再婚相手。そして、もともとひとりっこだった緑川さんには突如として5人の弟妹ができてしまった。そんな経験から緑川さんは、家族ってなんだろう?、と悩むようになったのです。そうですよね、いままで絶対的に私のお母さんだと信じて疑わなかった人がいなくなり、ある日とつぜん知らない女の人がやって来て今日から私のお母さんですよだなんて。しかも、見ず知らずのガキンチョ5人のことを弟妹としてあつかえだなんて。そんなの無理。無理、無理。

こうして精神的に不安定になった緑川さん。生活が荒れていた時期がありました。近所の愚連隊に所属して、悪いことをしていたことすらも。けれども、もちまえの正義感から、良心の呵責にたえきれず、愚連隊生活は長続きしませんでした。それから行き場をなくした緑川さんは、しだいに家に引きこもるようになりました。もう何も信じない、何もしたくない、何をしてもムダだ、と。

昼夜逆転の生活になり、学校にも通わず、深夜アニメばかり見てすごす無為な毎日。緑川さんは、そんな自堕落な生活をおくっていたのですが、ある日、ハタと気がつく。血のつながり、そんなものは関係ない、と。なぜ気がついたのかというと、見ていた深夜アニメのひとつに今の自分の置かれた環境と重なる作品があったからです。その作品のタイトルは忘れてしまったのですが、とにかく、その作品には複雑な家庭環境が描かれていて、それが原因でいろいろとトラブルがおこるのですが、けれども主人公はめげずに困難を乗り越えていくという、そんなストーリーでした。とにかく緑川さんはそのアニメにひどく感銘を受けたのでした。

緑川さんは「家族とは、なんぞや?」という自問に、「自分が家族だと認め、家族でありたいと願うものこそが家族なのだ。」と自答するようになった。血がつながってるから家族?いっしょに暮らしてるから家族?いや違う。家族でありたいと願うから家族なわけで、そのためには守らなければならない、家族を。戦わなければならない、家族のために。思春期の少女らしく、なんだか「家族」という言葉に酔いしれてる感すらある緑川さんなのですが。それはさておき、それからというもの、緑川さんは変わった。あたらしいお母さんのことは、まあ、アレだけど、子供は嫌いじゃないから、へんなわだかまりはすてて、とりあえず弟妹たちとは仲良くしてみようと。かれらを異常に可愛がるようになった。はじめは姉の豹変をいぶかっていた弟妹たちだったが、そう、かれらはあまり賢い連中ではなかったので、すぐに、まいっか、みたいな感覚で慣れてしまいました。

血縁にはこだわらないつもりでいた緑川さんなのですが、そこはそれ、やはり無意識のうちに意識していた。血のつながりがないのなら、いや、血のつながりがないからこそ、本当のキョウダイではないからこそ、より本当の本物のキョウダイらしくふるまいたい。緑川さんはそう願った。そして緑川さんは、緑川さんが理想とするキョウダイ像をいつも心に描きながら、弟妹たちにせっしていた。もしかするとこれはただの自己満足の「キョウダイごっこ」なのかもしれない、と、ときには冷静に自己分析する緑川さんでもあったのですが。そんな弱気なときは、自分を信じて行動していれば、きっといつか、ニセモノでもホンモノになれるはず、自分を信じなくてどうするんだ、と自身にハッパをかける緑川さんでしたとさ。